トークイベント「南房総2拠点サロン、台風被災 特別編」~私たちは自然災害とどう向き合うか

2019.10.11

9月9日未明、台風15号が日本列島を襲い、特に南房総エリアは甚大な被害を受けた。その一か月にあたる10月9日、シェアオフィス「HAPON新宿」(東京・新宿)で、被災の現状や災害時の支援のあり方を語り合うトークイベント「南房総2拠点サロン、台風被災特別編」が開催された。災害大国といわれる日本。私たちは自然災害にどのように向き合っていけばいいのか、登壇者と参加者がともに考えた。

「ボランティアに必要なリテラシー」10項目
パネリストとして登壇したのは、南房総の里山と都市をつなぐ活動をしてきたNPO法人南房総リパブリックの理事長、馬場未織氏と、一般社団法人The Future Lab.代表理事で防災士の田口空一郎氏。そのほか、館山市の地域おこし協力隊が被災状況を報告した。

馬場さんが理事長をつとめるNPO法人南房総リパブリックは、被災から4日後、東京・新宿で主に物資を受け付けるサポートセンターを設立。この経験から、「東京から、どのように被災地にかかわってきたか」という視点で話をした。

馬場さんが語ったのは、次のとおり10項目の「ボランティアに必要なリテラシー」。

1、情報はできるだけ、フェイスブックやツイッターなどで自分でとりにいく
2、1を聞いたら1を理解し、100に膨らませない
3、してほしいことができないときは、食い下がらず、寄附で支援
4、ボランティアをしたあと、被災者に「勉強になりました」と言うのは気をつけて
5、基本、知り合いを手伝うのがベスト
6、「受け取った現地がどう振り分けるか」を想像して、支援物資を送る
7、ボランティアは細かなパーツの集合体。ひとりで大状況を背負わない
8、全力で、半身で関わる
9、復旧はイベント、復興は日常
10、ボランティアからファンへ

「聞く人がイヤな気持ちになってしまうかもしれません」と前置きしたうえで、「ボランティアをしたい人からのメールの問い合わせが多く、その返事にかなりの時間を費やしてしまった」と馬場さん。さらに、必要とされていないボランティアをしたいという声が目立ったという。「そういうときは、寄附をするのも大きな支援。自分本位ではなく、被災地本位でボランティアを考えていただきたい」と話した。

また、被災地の状況を伝える際にも、情報を膨らませないよう呼びかけた。「物資が十分足りていると聞いても、その地区で十分ということであり、他の地区では十分ではないこともある。1を聞いたら1を理解し、100に膨らませないこと」と語った。

大停電から見えた、緊急時を救うライフスタイル
東日本大震災以来、官民の被災地支援活動に関わってきた一般社団法人The Future Lab.代表理事の田口さんは、今回の台風災害の対応の課題と房総地域が抱える地域課題の解決の方向性について語った。

今回、行政の初動対応が遅れた原因として、千葉県の情報収集の遅れと内閣改造があったことなどを指摘。常に迅速な情報収集と災害対応ができる行政組織として「防災庁」を国に置くことを提唱した。

また、災害時の応急活動では、「ピラミッド型とネットワーク型の2つの支援が必要」と説明。ピラミッド型とは、市町村から上がってきた情報をもとに、国や県がトップダウンで行う支援であり、一般的な行政組織だけでなく、自衛隊や消防、警察、災害派遣医療チーム(DMAT)なども当てはまる。ネットワーク型とは、横のつながりによるサポートのことで、災害ボランティアやNPO・NGOの連携や、SNSなどでの情報共有などがあたる。さらに、マッチングサイトによる物資支援や、「ふるさと納税」などのクラウドファンディングによる寄付なども含まれる。

今回の台風災害では、停電・断水や電話・ネットも使えない状態で孤立する地区が多数発生した中でことも、田口さんは言及。被災以前から「自主防災組織」をつくって活動していた南房総市の大井地区について取り上げた。大井地区が、被災して2日目には、地区独自の「災害対策本部」を立ち上げ、自分たちで炊き出しを行い、倒木を切り、道が通行できるようにするなど、地域コミュニティが自律的に災害対応したことの意義を紹介した。

「ふだんから自分たちでお祭りや炊き出し行い、側道の雑草を刈り、お金を出し合って車を購入し高齢者の移動支援や見守りを実践するようなライフスタイルが機能した。オフグリッドやマイクログリッドのようなエネルギーのあり方も含めて、災害で外部から孤立しても生き残れるような自律型のコミュニティづくりが大事」と田口さんは言う。

また、超高齢化と人口減少という厳しい現実の中で、後継者不足を抱える地域経済の持続可能性の問題や、独居高齢者の集住促進や自律分散型のエネルギーシステムの確立といったコンパクトタウンやスマートタウンと呼ばれるまちづくりの問題などにも触れ、「台風災害がトリガーとなって露わとなった房総の地域課題をいかに復旧、復興の中で解決していくか。ピンチをチャンスに変え、新たな地方創生のあり方を模索する機会とすべき」とも語った。

問題は現在進行形で起きていること
このイベントで特別ゲストとして出演した衆議院議員、柿沢未途氏は、東日本大震災をはじめ、台風15号の被災地を訪ねてきた経験から、「もし東京で停電が起きたら、タワーマンションのエレベーターが動かなくなり、高層マンション難民が出ると思う。今回の千葉の停電では、太陽光パネルで電力を確保した人もいる。この教訓を生かしたい」と会場に語りかけた。

10月12日には、台風19号が関東を直撃すると言われている。台風による災害は、“現在進行形”で起きていること。自然災害とどのように向き合い、未来をつくっていくのか。私たちはこれからも、考えていかねばならない。

(記事執筆=鋸南町地域おこし協力隊、清水多佳子)