【イベントレポート】南房総2拠点サロンvol.13~南房総×滞在~

2019.12.11

都心を離れて南房総に滞在する理由と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?
観光、アウトドア、スポーツ、臨海学校、企業研修など、南房総を訪れる目的は様々。今年は台風被害により観光で訪れる方が減ってしまった一方、多くの方がボランティアとして南房総の地を訪れました。
滞在の形も、民宿やホテルでの宿泊から、自分の拠点を持ち2拠点生活を始めたり、最終的に移住される方まで色々です。
今回は南房総での多彩な「滞在」について、3人のパネリストを招いてお話頂きます。
南房総2拠点サロン、vol.13のテーマは「南房総×滞在」です。

「今回は”滞在”という、かなり広い意味を持つテーマを設定しました。いろいろな滞在をシェアする場にして頂ければ」と話すのは、合同会社AWATHIRD代表の永森昌志さん。
永森さんの言葉通り、会場内ではお酒を片手に情報交換や雑談が盛んに行われていました。
13回目となる今回も、南房総での2拠点生活を楽しんでいる方、南房総で事業を手掛けている方、移住を検討中の方など、約30名の様々な参加者の方にお越しいただきました。

「出張マルシェ」ブースでは、館山市地域おこし協力隊の岡氏智美さんが野菜を販売。
ケール、トレビス、パクチーなど、全て館山市藤原の安西農園さんからの産地直送!
多くの参加者がお土産に購入されていました。


南房総での様々な「滞在」の形

南房総での「滞在」に関するお話、トップバッターは南房総市の地域おこし協力隊として、インバウンド観光の企画や観光のIT化・情報発信に取り組まれている相川武士さん。

バスツアーの様に名所を巡る「周遊型観光」に対し、特定の目的を持ち1か所でゆっくり過ごす観光の形が「滞在型観光」。近年、趣味の多様化やインバウンド観光客の増加を背景に、滞在型観光の割合は増加していると言います。

南房総には、誰もが知っている観光名所は多くはありませんが、豊かな自然がありゆったりとした時間が流れています。1か所に留まってゆっくり過ごしたり、アウトドアスポーツやヘルスツーリズムなどの体験を目的とした滞在型の観光は、南房総と相性が良いのではないでしょうか。

南房総にはバリエーション豊かな滞在先があり、滞在目的に合わせて施設を選ぶ事が出来ます。相川さんよりご紹介のあった滞在例の内、特徴的なものをいくつかご紹介します。

・岩井には音楽設備や体育館を備えた大規模な民宿があり、合宿や企業研修での滞在が盛ん。
・「大房岬自然の家」「大房岬ビジターセンター」「古民家ろくすけ」など自然体験に重点を置いた施設が充実。
・白浜の廃校リノベーション施設「シラハマ校舎」は、2拠点生活の拠点として利用可能。
・農泊等の民泊やコワーキング施設でのワーケーション(”Work”と”Vacation”を合わせた造語、詳しくは次回の2拠点サロンで!)など、新しい滞在の形も出現。


「ボランティア×体験」で継続的な関係作りを目指す

今年は台風による観光施設の被災やイメージダウンにより、観光に訪れる方の数は減少しました。しかし一方で、多くのボランティアの方が南房総を訪れました。

「今回の台風で生まれた人と地域の繋がりを継続的な関係へと発展させられれば」と相川さん。
そのためのアイディアの1つが「ボランティア×体験」です。
例えば倒木撤去のボランティアとチェーンソー講習を組み合わせ、ボランティアの方にスキル向上という付加価値を提供する、といった取り組みです。
魅力ある体験を提供する事で、ボランティアの確保や継続的な関係作りを目指します。

相川さん自身も、今後こうした体験型のボランティアを企画されるとのこと。
興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか。


田舎での「住」ビジネスを考える

2人目のパネリストは、空き家アドバイザー兼観光庁広域周遊観光ルート専門家の横山知由さん。
マンスリーマンションやシェアハウス事業を手掛けた後、「お試し移住先」の必要性を感じ「天然村」を立ち上げるなど、不動産関連の多彩な経験をお持ちです。

天然村の他、国際ボランティア受け入れによる地域活性化、クラウドファウンディングを用いた地域資源(棚田)の活用、民泊施設としての空き家活用などを実現。
天然村をはじめ、新しいビジネスモデルに積極的に取り組まれているのが印象的でした。

天然村運営の中で横山さんは以下3つの学びを得たと言います。地方での不動産ビジネスをお考えの方は是非参考にされて下さい。
①対象は観光客なのか定住者なのか、ターゲットを明確にする。
②定住者を増やすためには、定住先よりも雇用を増やす必要がある。
③大きな収益を見込めない田舎では、大きな投資を避ける(既存の物を活用するなど)。


空き家の活用と「アドレスクルーズ」の可能性

全国的に問題となっている空き家の増加。相続、所有権、改修費用などの問題から、中々活用が進んでいないのが現状です。こうした空き家を有効活用する方法はあるのでしょうか。

1つは「民泊施設として空き家を活用する」という方法ですが、それと同時に「アドレスクルーズ」のサービスを展開する事で、収益性の良い空き家活用を実現出来る、と横山さんは話します。

「アドレスクルーズ」は、複数の家を移り住む事が出来るサービスです。
近年、自分の家を持たずに色々な地域を住み歩く「アドレスホッパー」という概念が話題となっていますが、アドレスクルーズの特徴は「特定の地域内限定」であること。
海側や山側など、地域内の様々な拠点で生活を楽しむ事ができ、将来的な定住に向けてのトライアルステイの側面も併せ持っています。

こうしたアドレスクルーズの概念は、2拠点生活の形を変化させる可能性も秘めています。
東日本大震災を経て、「都市災害時に地方に避難できる」ことが2拠点生活のメリットの1つと考えられていました。
しかし、今年の台風では関東から東北の広範囲で災害が発生。2つの拠点に家を持つ事は、両方の被災を心配する必要があるというデメリットとなり得ることがわかったのです。

こうした背景から、地方側の拠点には自分の家を持たない「都市+地域内多拠点(アドレスクルーズ)」という生活の形が浸透するのではないかと横山さんは言います。
都会と田舎の生活を両方楽しむ生活には、今も多くの人が魅力を感じています。
よりリスクの低い多拠点生活へと潮流が変わる可能性も考えられるのではないでしょうか。


「トライアルステイ」で南房総との相性を占う

南房総市地域おこし協力隊として移住定住促進を担当されている小林さんからは、現在南房総市が行っている事業「トライアルステイ」の紹介を中心にお話しいただきました。
小林さん自身も今年7月に移住したばかり。東京在住時から続けている編集・ライターの仕事と協力隊の二足のわらじを履きながら、農作業や海釣りなど、田舎暮らしを満喫されています。

「移住も人間関係と同様、相性が大切」と小林さん。移住してから「こんなはずではなかった」とならないよう、移住前に地域との相性を確かめるのが重要だと言います。
ちなみに南房総と相性のいい人は「のんきな人」。気候が温暖で魚も農作物も豊富なので、人ものんきな方が多いそうです。あまり気を張り過ぎない人の方が、南房総でのゆったりとした暮らしに向いているのかもしれません。

そんな南房総との相性を確認できるのが、南房総市のお試し移住体験「トライアルステイ」。
「南房総市を訪れた事のある個人またはグループで南房総市への移住・2拠点生活を検討している市外在住者」を対象に、2泊~5泊の期間無料で宿泊施設を利用できる、というサービスです。
移住後の生活をイメージできる「南房総2時間行脚」や、軽作業のお手伝いをしながら市民の方とふれあうことができる「お手伝い的南房総訪問」も用意されています。

小林さんも海の近くの「平磯住宅」でトライアルステイを体験し、地元の人との交流や、青春映画の様な自転車での海沿いサイクリングを楽しまれたそうです。
(小林さんのトライアルステイ体験は、こちらの記事で詳しく紹介されています。)

南房総への移住をお考えの方、南房総との相性を確かめるためにも、移住前にトライアルステイを体験してみてはいかがでしょうか?


南房総での暮らしをディープに体感「HEDATE PASSPORT」

さらに地域を深く知る事が出来るサービスが、千倉町平舘地区の「HEDATE PASSPORT」。
「農作業のお手伝いをする」「猪の罠を見回る」などのミッションをクリアしてスタンプを集め、すべてコンプリートすると梅の木のオーナーになれるというユニークな企画です。
ミッションをクリアしていく中で地元の人と仲良くなり、地域を深く知る事が出来る仕組みになっています。
平舘地区は海や山などの自然が豊かで、町も活気があり、移住先としてもおすすめのエリアです。
興味のある方はぜひコンプリートを目指してみてください。

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南房総2拠点大学、次回のテーマは「ワーケーション」「企業研修」です。
HAPPON新宿と南房総の2か所での開催も検討中との事ですので、ぜひご参加ください!